民族楽器やテクノ、ドラム、ギターなどの音源集。DTM、DJ、クリエイター向けのサンプリングCD販売はディスカバリーサウンド。

アナログとディジタルの必然的邂逅（であい）。狂喜を生み出せ、ヴァイナル主義宣言。

　この“スクラッチ”と呼ばれる技法が、今日のメインストリームを成すミュージックプロダクツに、いかに大きな影響を与えたかを論じるのは、ギターのカッティング奏法についての議論同様、あまり大きな意味はもたない。ただ、スクラッチの性格を理解することは、けっして無駄ではない。

　“スクラッチ”は画期的・感情的で、しかも一般的に認知されるようになった。画期的なのは、塩化ビニール（ヴァイナル）製のレコードから発する摩擦音を吸い取り、電気的に発音させる。つまり、鑑賞する対象を楽器にまで昇華させたところだ。ラジオのヴォリュームつまみをひねって音量を大小させても、業界を一変させることは無理だっただろう。ダイヤモンド製の針がついたカートリッジを、あたかも自身の爪のように扱い、実際の手はレコードを小刻みに回転させたり、フェイダーの操作で忙しい。これらの行為は戦闘を連想させ、感情的な技法と思わせる所以にもなる。

　「ヴァイナリズム」というサンプリングCD-ROMは「ヴァイナリズム」と、主義・主張を意味する「イズム」をもじった合成語を冠している。また、カタカナの表記では「リズム」という語句を見つけることができるだろう。文字通り、名は体を表している。

　スクラッチ技法の再現には、従来なら2台ほどターンテーブルなどを実際に購入するなどの方法があった。

　しかし、「ヴァイナリズム」はあらゆるテクニックとテンポを、デスクトップ上で視覚的に生成できる。当然、ディジタル特有の固く冷たい感触は一切なく、奥行きがあり、ソフトかつ重厚なスクラッチノイズを提供する。予算・時間・空間が限られたプロデューサーにとって、これほどの強いサポーターは存在しないだろう。